Motohide Miwa from USA, CC BY 2.0
PSL狙撃銃(Pușcă Semiautomată cu Lunetă)は、1970年代にルーマニアが開発した7.62mm口径の狙撃用ライフルである。AK47の派生型のアサルトライフルであるAKMをベースに開発しており、FPKの名称で名称で呼ばれることもある。
外見は旧ソ連製SVD狙撃銃に酷似しているが、独自の設計を持つ半自動式狙撃銃である。
性能と構造的特徴
Motohide Miwa from USA, CC BY 2.0
PSL狙撃銃は、その設計と性能において独特の特徴を持つ。全長1,225mm、重量4.31kg(弾丸なし、スコープ装着時)で、830m/秒の銃口初速を誇る。有効射程は1,000mに達し、スコープ使用時に最大の効果を発揮する。
作動方式は、ガスピストンとボルトキャリアーが一体化したロングストロークピストン式を採用している。この方式により、信頼性と耐久性が向上している。銃身長は620mmで、7.62x54mmR弾を使用し、10発装弾可能なマガジンを備えている。
PSLの特徴的な構造要素には以下がある。
PSL狙撃銃の特徴
- レシーバーはAKMと同様に板金プレス加工で製造され、内部部品はリベットで固定
- レシーバー左右先端部にRPKやツァスタバ M70と類似の強化リブを装備
- 銃口部のフラッシュサプレッサーは、マズルブレーキ兼用で銃身と横方向に溝が刻まれている
- 弾倉後部のマガジンキャッチはトリガーガード前端部に密着
- 前部ハンドガードは上下に分割可能
- 頬当ては銃床と一体化
- マガジン側面にX字型のプレス強化リブを装備(ドラグノフとの互換性なし)
照準器はアイアンサイトを標準装備しているほか、光学照準器や暗視式照準器をレシーバー左側面部にあるアリ溝式レール(Doveteil Rail)に取り付けられる。この設計により、様々な照準器の装着が可能となり、状況に応じた柔軟な運用が可能となっている。
なお、このアリ溝式レールは、ドラグノフ狙撃銃(SVD)との互換性がある。
PSLは、小隊の選抜射手(マークスマン)向けに設計されたマークスマンライフルであり、その設計・運用思想はソビエト連邦製のドラグノフ狙撃銃に類似している。しかし、内部構造的にはドラグノフよりもAKMやRPK軽機関銃との類似点が多く、独自の特性を持つ狙撃銃として位置づけられている。
ルーマニア軍での採用実績と運用
ルーマニア軍は1970年代からPSL狙撃銃を標準装備として採用し、長年にわたり運用してきた実績がある。PSLは主に歩兵小隊レベルでマークスマンライフルとして使用され、中距離から長距離の精密射撃任務に活用されてきた。その信頼性と使いやすさから、ルーマニア軍内で高い評価を得ているとされる。
近年、ルーマニア軍は装備の近代化を進めており、2023年にはK9自走砲54門の導入を決定するなど、NATO基準に合わせた装備更新を行っている。しかし、PSL狙撃銃は依然として現役で運用されており、その実用性と費用対効果の高さから、完全な置き換えは行われていない。PSLは、ルーマニア軍の狙撃能力の中核を担う武器として、今後も一定期間運用が継続されると見られている。
他国での採用実績と運用国|アフガニスタンなどで導入例あり
かつて存在したアフガニスタン警察(※現在のイスラム首長国警察)の特殊部隊「CRU」やアフガニスタン軍にて、PSL狙撃銃の使用が確認されていた。CRUは他にもPKM機関銃といったロシア製をはじめとした旧共産圏(いわゆる東側)の銃火器を装備していたが、アメリカ政府からの装備品の供給によって、銃火器や車両はM16やハンヴィーなどの、NATOをはじめとしたいわゆる「西側」で使用されているアメリカ製の装備の導入が進んだ経緯がある。
現在もアフガニスタン軍やアフガニスタン警察がPSL狙撃銃を使用しているかどうかは確認できていない。
その他の採用国としては、エチオピアやバングラデシュ、シリア、エリトリアなどが導入したことがあるとされるが、詳細は不明である。
PSL狙撃銃の派生モデル|同じAKベースのスナイパーライフルたち
PSL狙撃銃(FPK)自体がアサルトライフル「AKM」を元に開発されたAKMの派生モデルとして位置付けられており、PSL狙撃銃自体の派生モデルは存在しないといえる。
なお、AKM自体もAK47を初めとしたAKシリーズの派生モデルであるが、同じAKベースのスナイパーライフル及びマークスマンライフルには、旧ユーゴスラビアで開発されたマークスマンライフルの「ツァスタバ M76」や、イラクで開発・生産された「タブク狙撃銃」などが存在する。
PSL狙撃銃のエアガン&モデルガン情報|主要メーカーには存在せずSVDでの代用しかない
PSL狙撃銃のエアガンやモデルは、2024年現在、東京マルイをはじめとした主要メーカーからは発売されていない。外見がドラグノフ狙撃銃(SVD)に類似しているため、SVDのエアガンで代用するしかない状況にある。