ミリタリー

ブルパップでボルトアクション!DSR-1狙撃銃とはー特徴や性能、採用国などを徹底解説

2024年9月1日 editor-team

DSR-1

DSR-1

DSR-1とは、2000年にドイツのAMPテクニカルサービス社が連邦警察特殊部隊GSG-9の要請で開発した、ブルパップ方式のボルトアクション狙撃銃である。法執行機関向けに設計されたこのスナイパーライフルは高精度かつ多様な弾薬に対応しており、開発国であるドイツをはじめとした複数国の警察・法執行機関で採用されている。

DSR-1の性能と主な特徴

2000年にGSG-9の要請を受けて設計・開発された経緯を持つDSR-1は、ドイツのエルマ・ヴェルケ社のSR100ボルトアクションライフルをベースとしている。銃身はフリーフローティングバレルを採用し、マズルブレーキも装着するなど、性能向上のための細部にまで配慮がなされている。銃身上部にはマウントレールが設置されており、二脚やスコープの取り付けが可能である。

サイズ(全長及び銃身長)と特徴

DSR-1のサイズと重量
全長990mm
銃身長650mm
重量5.9kg
その他特徴フリーフローティングバレルを採用

DSR-1の標準モデルは全長990mm(うち、銃身長は650mm)で、重量は5.9kg(5,900g)となっている。

DSR-1の銃身はフリーフローティングバレルとなっており、ハンドガードには通気孔を設けている。これにより、発射時の振動や熱による影響を最小限に抑え、高い精度を維持することができる。さらに、銃身の先端にはマズルブレーキが装着されており、発射時の反動を軽減すると共に、連続射撃時の精度向上に寄与している。

その他の特徴には、トリガーガード前部(※ブルパップ方式でない通常のライフルにおける弾倉装着部)にはスペアマガジンを1個装着できることが挙げられる。なお、誤解されがちだが、この部分に装着したマガジンから給弾することはできない。

発射機構の特徴

DSR-1の発射機構
作動方式ボルトアクション方式ローラーディレイドブローバック方式
ライフリング4条右回り

DSR-1の発射機構は、高精度と信頼性を両立させた設計が特徴である。本銃はボルトアクション方式を採用しており、4条右回りのライフリングと合わせて射撃の一貫性と精度を高レベルで実現している。ボルトの操作は、ブルパップ方式での設計により銃の後部に配置されており、素早い装填と排莢を可能にしている。

作動方式はローラーディレイドブローバック方式を採用。この機構により、発射時の衝撃が緩和され、射手への反動が軽減されるとともに、連続射撃時の精度維持に貢献している。また、この設計はボルトの動作をスムーズにし、高速な連続射撃を可能にしている。

トリガーは、精密な調整が可能な2段階式を採用しており、狙撃銃に求められる繊細な引き金操作を実現している。さらに、安全装置は人間工学に基づいて設計されており、素早く確実な操作が可能である。

DSR-1の発射機構は、高い信頼性と精度を実現するだけでなく、様々な環境下での運用を考慮した設計となっている。これらの特徴により、DSR-1は法執行機関や特殊部隊から高い評価を得ている。

使用弾薬と装弾数及び有効射程と命中精度

使用弾薬有効射程装弾数
308ウィンチェスター弾(7.62mm×51mmNATO弾)800m5発
.300ウィンチェスターマグナム弾1,100m5発
.338ラプアマグナム弾1,400m4発

DSR-1の対応弾薬及び口径のバリエーションは、308ウィンチェスター弾(7.62mm×51mmNATO弾 / 装弾数5発)、.300ウィンチェスターマグナム弾(装弾数5発)、.338ラプアマグナム弾(装弾数4発)の3種類である。有効射程は使用弾薬により800mから1,400mまで変化し、.308ウィンチェスター弾使用時の有効射程は800m、.300ウィンチェスターマグナム弾では1,100m、そして.338ラプアマグナム弾を使用した場合は1,400mに達するとされている。

なお、派生モデルであるサブソニック弾(亜音速弾)の使用を見据えて特別設計された「DSR-1 サブソニック」では.308サブソニック弾が使用できるほか、.50BMG弾を使用する対物ライフルである派生モデル「DSR-50」も存在する。

命中精度は0.2 MOAと極めて高く、最適な条件下では0.17 MOAにまでさらに向上するとされている。

DSR-1の採用実績|ドイツを含む欧州各国などで採用

主な採用国と採用機関
採用国採用機関
ドイツGSG-9(連邦警察特殊部隊)
ルクセンブルク大公警察(=国家警察)
エストニア国家警察
デンマークフロッグマン中隊(デンマーク海軍特殊部隊)※英語:Frogman Corps※デンマーク語:Frømandskorpset
スペイン国家警察特殊作戦部隊
マレーシアRMAF Special Forces(通称PASKAU / マレーシア空軍空挺部隊)※英語:RMAF Special Forces※マレー語:Pasukan Khas TUDM

開発国のドイツをはじめとする欧州各国を中心に採用されている。

警察及び法執行機関でのDSR-1の採用実績には、ドイツのGSG-9(連邦警察特殊部隊)、エストニアの警察、ルクセンブルクのGrand Ducal Police(※大公警察=国家警察)、そしてスペインの国家警察特殊作戦部隊がある。これらの機関がDSR-1を選択した背景には、本銃の高い精度、多様な口径対応、そして法執行活動に適した設計が評価されたものと考えられる。特に、GSG-9の要請で開発されたという経緯から、対テロ作戦や人質救出など、高度な精密射撃が要求される場面での運用が想定されている。

各国軍隊でのDSR-1の採用実績には、デンマーク海軍特殊部隊である「フロッグマン中隊」やマレーシア空軍特殊部隊(※空挺部隊)である「RMAF Special Forces(通称:PASKAU)」が挙げられ、軍においても特殊部隊での運用が目立つ。

上記2カ国以外では、アラブ首長国連邦軍でも使用されているとされる。

DSR-1の派生モデル|サブソニック弾バージョン等が存在

DSR-1は通常モデルに加えて、亜音速弾用の「DSR-1サブソニック」、対物ライフルバージョンの「DSR-50」の2つの派生モデルが存在する。また、本銃がベースとなって開発されたとされるスナイパーライフルに「Desert Tech SRS」がある。

DSR-1サブソニック|亜音速弾用の派生モデル

弾速を音速以下に抑えることで消音性能を高めたサブソニック弾(亜音速弾)用に専用設計されたDSR-1の派生モデル(※弾速を音速以下に抑えると、弾丸の飛翔時に発生する大きな音を伴う衝撃波が抑えられるため、消音性能が高まる)。

通常のDSR-1との違いとしては、銃身長が310mmに短縮されている点や、サブソニック弾に最適化した1/8インチのライフリングを採用している点が挙げられる。

DSR-50|対物ライフルバージョン

DSR-50
DSR-50

.50 BMG弾(12.7×99mm NATO弾)を使用する、DSR-1の対物ライフルバージョン。長距離での対物狙撃や軽装甲車両に対する攻撃能力を有している。

DSR-1との主な違いとしては、バレルが800mm、重量が10.1kgと大型化しているほか、装弾数が3発に減少していることなどが挙げられる。

一方で、ボルトアクション方式かつブルパップ方式である点等はDSR-1と同様である。

Desert Tech SRS|DSR-1を参考に開発したとされるアメリカ製狙撃銃

Desert Tech SRS,SRS A1
Desert Tech SRSシリーズのSRS A1

Coldboremiracle, CC BY-SA 4.0

アメリカのユタ州に本社を置く銃火器メーカーであるデザートテック社によって開発されたスナイパーライフル。DSR-1がベースになっているとされており、DSR-1と同様のブルパップ方式のボルトアクションライフルであるなど設計に類似点がみられる。名称の「SRS」は「ステルス・リコン・スカウト」の頭文字をとったものである。

こちらもタイ王国国家警察庁(※タイの国家警察)やジョージア軍といった、軍や警察をはじめとした法執行機関での採用実績がある。

  • この記事を書いた人

editor-team

-ミリタリー